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SPECIAL >> Interview: 灰二&タロウ対談(後編)

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photo by Lucy

THE VANILA とのセッションはタロウの中に忘れかけていた熱い感覚を呼び起こさせた。
3月28日の下北沢club251のライブ。タロウは灰二と共にジャンプを決め、のけぞってギターを弾き、初めてのステージにもかかわらず、コーラスもこなし自分をステージにぶつけていた。タロウは THE VANILA を急速に吸収していく一方で、一度は諦めかけていた「バンドへの思い」にも息を吹きかえらせていた。

インタビュアー:
「出会って2回スタジオに入ってリハをして、いきなり本番のステージに立ったわけだけど、ライブをやってみてのタロウさんの感触はどうだった?」
タロウ:
1回目のライブ終わって自分自身では、あまり良くはなかったんですよ、ライブ。
灰二:
納得いくようなもんじゃなかった?
タロウ:
(うなずいて)もっと出来るなー。先がみえるから、もっとやりたいなぁ。そこで凄く葛藤していて。やりたいなぁとは思ったの。ライブ後の打ち上げの二次会で灰二さんの方から、「メンバーとしてちゃんとやらない?」って言われて。その時に即返事でもよかったんですけど、果たしてこのままやりたいって気持ちはあるんだけれども、一歩その気持ちからひいてもう1回考えてみたかったんですね。
インタビュアー:
「なぜそんなに慎重に? 」
タロウ:
うーん…。(しばらく考えて)何でだろうね。まあちょっと待ってくださいよと。もう気持ちは決まってるんですけど、ちょっと1回冷静になってというか…。THE VANILA って僕が入るまで歴史があって、作ってきたものがあって、壊しちゃいけないって思うし。僕も合わせるのではなくて、自分らしさも出していかなくちゃいけないから、そのすり合わせとかって、どうやったらできるのかなっていうのは大変な作業だと思うし。今となってはどうって事ないけどバンドに後から加入するのは初めての事で、勇気のいることだった。それから一週間後くらいでしたっけ?
灰二:
そうだね。一週間後ぐらいだね。今度は伊藤も交えて3人で少し飲んで。そこで伊藤がバンドの連絡事項を話すわけ。スケジュールはこれで大丈夫かな?とかって。ちょっとその前に「タロウちゃんやるかどうか、今聞かなくちゃダメなんじゃないの?」って。「あ、まだ聞いてないね、そういえば」みたいな。そこで聞くんだよね。「どうする?」って。
タロウ:
まだちょっと悩んでたんだけど。 やっぱりその自分、音楽…ホントにこう魂込めてやってきたBOWLが解散して、1年のブランクがあったから、果たしてまた、バンドができるものかどうかっていうって自分に対しての自信がすごく一番ネックになっていて…。でも、結局それもやってみなくちゃわからないし、違う見方すると迷惑掛けるかもしれないなぁとも思ったりもしたのね。けど、やりたい。単純に話していて楽しいし、今まではバンドを自分で作ってきたから自分がこうしようよって先頭に立ってやってきたけど今はみんな、灰二さんも伊藤さんも、自分以外の人間も意見を出し合えるっていうのが、凄く楽しかった。わかりにくいんだけど。
灰二:
わかるよ。バンドの中でね、そういう環境って難しくってさ、よくあるバンドで言えば誰かがお客さんだったりするわけ。
タロウ:
わかった!みんな受身じゃないんだ。このバンドは。
灰二:
役割分担がハッキリしてるわけ。だから、それぞれが頭を使って動いてる。発言はしなくても、スタジオの中でプレイするっていうような事がキチッと出来てる。
インタビュアー:
「今までは THE VANILA のギターは、ずっとサポートだったわけだけど、常に正式メンバーは欲しいと思っていた?」
灰二:
もちろん、もちろん。ずーっと大槻隆 (maniac studio)にやってもらっていたんだけど、彼も自分のバンドを立ち上げたばっかりだったから、メンバーっていう事ではないというか、それはお互いに。やっぱり当然ギターってのはさ、俺が心臓だとするとそのバンドの服だったり皮膚の色だったりするわけ。どんな服を着せるかって事でバンドは変わってしまうから。俺は常にギタリストを探してて、やっぱりタロウちゃんとは精神的な部分でお互いに伝わる部分が多かったんでね。
タロウ:
うん。
灰二:
音楽だけじゃなくてさ。
タロウ:
けっこう俺人見知りなんですけど、灰二さんとは普通に話せるなーっと思って。ってことは、合うのかなぁって勝手に思ったりして。
灰二:
話が合わない奴とか、話すことが何にもない奴っていうのは、やっぱり一緒にやるの難しいよ。バンドって音楽だけじゃない部分って、あるじゃない?例えば、今度レコーディングするんだけどアルバムのジャケットの話、衣装の話、フライヤーの話。ライブの時間に来てライブが終わったら帰るわけじゃないから、いろんな話が出来ないと、やってて面白くないしね。
インタビュアー:
「今後、タロウさんは THE VANILA でどう自分を表現していきたい?」
タロウ:
もちろん熱いステージを一番に考えてるし、今までの THE VANILA になかった歌とギターのいやらしい絡みをもっと出したい。今までの THE VANILA を知ってるお客さんには、僕が入ったことで全部とは言わないけど、全て新曲みたいなフレッシュな感じには仕上げたいなと。
灰二:

そうだね。やっぱりメンバーが一人増えたって事で、俺と伊藤の意識も凄く高まってきてるし、今後ライブは、毎回毎回今まで以上に「伝わるライブ」が出来るんじゃないかな、と。

今年これからレコーディングに入るんだけど、基本的には自由にタロウちゃんを表現できればいいし。たぶん年内には録り終わるかな。今までやってきたものの一つの区切りで、20年目にして、ファーストアルバムですから(笑)。

うちのバンドって物凄く自由なのね。最大限個人を出して欲しいってのがあるから、ある意味今までやってきた事とか、サウンド面でタロウちゃんが壊せればいいなと思うし。THE VANILA って凄く歴史が長いバンドなんだけど、今はこいつらとやってるわけだから、今の音をやりたい。最新の音楽っていう意味じゃなくて、今の THE VANILA を表現できればいいと思う。 その為には、タロウちゃんは凄く必要だと思う。

(2008年4月都内某所にて)

インタビュアー:sumiko www.stay-or-go.jp